合唱団葡萄サードコンサート曲目解説


イタリア・ルネッサンスの教会音楽
 この時代の音楽と言えば、主役は声であり、ポリフォニー合唱の黄金時代でもあったと言えます。数々の教会音楽や世俗音楽の名作がルネッサンス期に生まれました。各パートが独立した旋律を歌い、決まった拍子が有る訳でもなく、メロディーが追いかけ合い、絡み合いながら美しいハーモニーを紡ぎ出します。今日はその時代の代表的とも言うべき、パレストリーナの作品を4曲中3曲選びました。技巧的に無理が無く、しかも美しいメロディラインは、パレストリーナ・カーヴと称されています。対してマレンツィオは、元は世俗曲を中心に書いた作曲家で、教会音楽ではありますが、マドリガーレ風に軽快に歌われます。


無伴奏混声合唱のための「北極星の子守歌」
 この曲集は、谷川雁作詞・新実徳英作曲による「白いうた 青いうた」という二部合唱曲集から8曲が選ばれ、アカペラの混声合唱曲集として新実自身により編曲されたものです。「白い〜」は、先に新実がメロディーをつくり、それに谷川が歌詞をつけ、それをもとにまた新実が対旋律をつけるという、合唱曲の中では珍しい形の共同作業により作曲されたものです。各曲のタイトルが歌詞に出てこないことも多く、谷川の非凡な才能が推し量れます。谷川が亡くなったことにより、53曲で新しい曲はできなくなってしまいましたが、これらの曲が、女声・男声・混声など様々な編曲集として、今でも生み出されています。曲集のタイトルにもなっている「北極星の子守歌」は女声合唱団青い鳥とTokyo Male choir Kuukai にて委嘱初演され、他の7曲は宇都宮室内合唱団ジンガメルにて委嘱初演されました。列車が遅れたため、新実が初めて演奏を聴いたのはジンガメルの打ち上げのときというエピソードも残っています。


   F・プーランク「悔悟の時のための4つのモテット」
 プーランクは初期、印象主義への反動として結成されたフランス6人組の1人として、エスプリの効いた都会的な作品を発表していました。その彼に、1936年、宗教的な作品を書く動機となるある知らせが届きます。将来を期待された作曲家でもあった親友の死です。彼は後年こう述べています。「あんなに優れた音楽家が突然消えてしまったことは私を心底から叩きのめした。われわれ人間の条件のもろさについて思いを巡らしながら、私は改めて霊的な生活に惹かれたのでした・・・」この曲は、第2次世界大戦のはじまる直前の1938-39年に、十字架に架けられ、人々の犠牲となったイエスの受難に対し懺悔するための聖週(復活祭前の1週間)のためにかかれた作品です。人間のもろさを思い知らされ、そして大戦へと進んでいく人間の愚行を目にしたプーランクはこの曲をどんな思いで書いたのでしょうか?自らの苦悩に対する救いを求め、また、おろかな愚行を繰り返す人間への批判をこめ書いたのではないでしょうか?そしてその根幹には「平和と喜び」を求める姿が在ったのではないでしょうか?時代が大戦に突入した中で、彼は反ナチス運動へも加わっています。その時に反戦詩に作曲された自由への謳歌「人間の顔」でも彼の平和への願いが強く示されています。


   Gospel&Pops
  映画「天使にラブソングを」をご存知ですか?売れない歌手が、ひょんなことから修道女として歌の指導することになります。彼女の歌への情熱は周囲の人々を変えてゆき、1作目では地味な修道院が、2作目では廃校寸前の高校が、素晴らしい聖歌隊を持ったことで危機から救われます。歌には、そうまでさせる力があります。喜びや悲しみ、愛することや祈ること、暗い場所にも光を当て、聞く人に想いを伝える歌というものに、私たちは魅せられてやみません。
 第4ステージでは、ヘンデルの名曲をアレンジした「Hallelujah!」、恋人を想う「You are the new day」「And I love her」、そして「天使にラブソングを」から、聖母マリアを称える「Hail Holy Queen」、神と共にある喜びを歌う「Joyful Joyful」をとりあげました。さまざまな場面から、合唱団葡萄の歌への想いを皆さんに伝えます。


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